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Moment di 360°

03

anniversario

真っ白いデュベの上に、ダークブラウンの靴箱が埋まっていた。
「新しい靴?」
鏡の前に立ち、わずかに小首を傾げるようにしてダイアモンドのピアスを付けている彼女にたずねた。
「すごく素敵でね、一目惚れしちゃったの」
「どんな靴なの?」
「ハイヒール。履くところが花びらみたいな曲線のカッティングになっていて、どの角度から見ても、すごく華やかなの。」
口紅の塗られた唇の端が、嬉しそうに持ち上がった。

  • 「それはいいね」
    その幸せそうな表情に、僕はつられるように微笑み、ソファに腰かけた。そして淡いカラーのワンピースに包まれた彼女を見つめた。
    「何見てるの?」
    「いや、きれいだな、と思って」
    彼女は鏡越しに僕を見据えると、大きな目を細め、それからおどけたような表情で笑った。その笑顔がまた、彼女らしい。
    「オープントゥで華やかな印象だから、このドレスにもぴったりだなと思って。でもカジュアルな服装に合わせても絶対素敵なはず」
    それに、その靴はとてもきれいなオレンジ色だ、と僕は心の中で付け加えた。
    「履いて見せてよ」
    「一番、最後にね」
    爪先立ちになった彼女は踊るようなステップで僕の前を横切ると、バスルームへ入って行った。

  • 開いたままの扉から、化粧品のケースが立てるパチパチという音が響き、それからパフュームの香りが漂って来た。みずみずしいカシスに、バニラの混じった香りは彼女にとてもよく似合っていた。
    僕はふと、窓の外に目を向けた。
    もうすぐ彼女は、この靴箱を開けて、真新しいハイヒールに足を通すだろう。いつだって彼女は、まるで神聖な儀式のように、出掛ける準備の最後の最後に靴を履くのだ。しかし、今日はその中に密かに隠された、美しくラッピングされた小さな箱を見つけるはずだ。
    記念日となるこの日、彼女がこの靴をはいていたことをいつまでも忘れないような気がした。
    「準備完了」
    弾むような彼女の声が聞こえた。

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