ブラック、ゴールド、そしてタッセルで綴る、凛々しく華麗なフォーマルの世界
Interview
the COLLABORATION
"CINOH×PELLICO"
INTERVIEW 茅野誉之さん /「CINOH」デザイナー
___デザイナーを志したきっかけは?
これといったきっかけはないのですが、中学の頃から服が好きで、「文化服装学院に進学したい」と思っていました。小学校の文集を見返すと、すでに「就職はしたくない」と考えていたようです(笑)。漠然と「手に職をつけたい」と思っていて、料理人やカメラマンなど、さまざまな選択肢があった中で、洋服に一番興味があったのでしょうね。
デザイナーになると決めたのは高校1年の時。私服登校ができる公立に通っていたこともあり、ファッションがますます楽しくなって。アルバイトでお金を貯めては東京へ服を買いに行ったり、服が作れる友達の母親にパターンの引き方を教わり、自分の服を作ったりしていました。
ある日、親の車の中で、文化服装学院の名誉教授だった小池千枝先生のラジオをたまたま聴いていて。そこで、ラフ・シモンズが田舎出身で自然の中で育った。自然の葉脈とドレープには通ずるものがあるしそういった美意識が影響したのでは?というようなニュアンスのことを話しておられて自分も似たような環境だなといった単純な思いが後押しになりました 笑
___CINOHの服作りのこだわりを教えてください。
また、素材へのこだわりも大きく、特に着心地の良さと存在感のある仕上がりを意識しています。存在感というのは、服が仕上がったときの佇まいみたいなもので、立体感を持たせるための生地設計やドレーピングには気を遣っています。ちょっと感覚的な話になってしまうのですが、デザインが入る場合でも、素材感や仕様がマッチしていないと、衣装的なものに見えてしまうんですね。日常生活でリアルに着られるデザインで、しかも着ていて心地が良いものというのが僕の服作りの軸になっています。
___「ブラックフォーマルコレクション」を始めた理由は?
もちろん、保護者としてマナーを守り、シーンで浮かないことは大切ですが、その一方で、もっと洗練されたスタイルや自分らしさを表現できるようなフォーマルウェアがあってもいいのではないかなと。加えて、それがフォーマルの場だけでなく、日常でも着回しできるようなものだったら便利で、嬉しいはず。ハイブランドではそういったイメージで作られた服は存在しますが、もっと手が届く価格で、品質にもこだわったフォーマルウェアを提供したいという思いから、2022年に「ブラックフォーマルコレクション」を立ち上げました。今回ペリーコとコラボレーションさせていただいたシューズは、このコレクションの限定モデルです。
___今回のコラボシューズをデザインするとき、どう構築しましたか?
デザインのベースとなる木型は、セミスクエアトゥの“DAMA(ダマ)”に。ペリーコの通常モデルよりもカッティングを深くし、履き口のVラインがシャープに見えるようにしました。ヒールは歩きやすい範囲で一番高くしたくて、重心をしっかりと支える“ラッカート”という仕上げのヒールをペリーコ側に提案してもらって。そこに独特のムラ感を出すアンティーク加工を施し、フレッシュな印象に仕上げました。9cmのヒールでも無理なくエレガントに見える技術が素晴らしく、結果として、凛とした強さと華やかさを併せ持つ、コンテンポラリーなシューズに仕上がったと思います。
___このシューズをどんな女性に履いて欲しいですか?
近年、ファッション業界ではジェンダーレスやユニセックスなアイテムが増えていますが、あえてCINOHではウィメンズとメンズを分けて展開しています。たとえ、着る人の幅が狭まるとしても、ブランドが考える女性像や男性像を意識した表現をしていきたい。そういった中でパンプスやハイヒールといったものは、女性をより美しく、魅力的に見せるアイテムだと思います。履くことで自信を持てたり、気持ちが前向きになれたりするのなら、女性にヒールパンプスはもっと普及した方がいいですし、性別に関係なく、楽しい世の中になるのかなと僕自身は思っています。
TAKAYUKI CHINO/茅野誉之/「CINOH」デザイナー 1981年長野県生まれ。2004年3月に文化ファッションビジネススクール(現文化ファッション大学院大学)を修了。2007年に「モールド(MOULD)」を設立し、2008-09年秋冬シーズンに前身となるブランドを立ち上げた。2014年春夏コレクションにブランド名を「チノ(CINOH)」に変更。“一瞬の時の中に存在するだけでなく、ワードローブ・想い出に残るモノ創り”を理念とし、高揚感のあるリアルクローズを提案している。 Instagram : @cinoh_official |