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Interview
Donna per PELLICO

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Interview 辻直子さん

Interview 辻直子さん

フェミニンでいてモダン。独特のムードをもつスタイリスト・辻直子さんの着こなしに憧れる女性は多い。確固たるスタイルをもち、ファッション界の第一線で活躍する彼女が選んだのは、“ANELLI”のバックルが施されたショートブーツと海に浮かぶ島“ISLAND HEEL”が特徴的なパンプス。新作2足とともに紹介する、辻さんらしいおしゃれのメソッドとフィロソフィー。

スタイルがある人は、“好き”をゆずらない

「黒い靴は、私にとって定番のシューズ。当たり前に好きだし、だからとっておきの黒が揃っています」

穏やかな口調でそう語る辻さんが、黒い靴に惹かれたのは数年前のこと。それまでは、黒い靴に面白みを感じられなかったそう。

「黒い靴を新鮮に思えた瞬間が来たのだと思います。昔も今も、ブランドだから持ちたいとか流行っているから着たいというのはありません。自分がそれを“好き”かどうかが大事で、その点からすると、私はショートブーツが好きで、それ以上の丈のブーツはなかなか選ばないですね」

スタイルがある人は、“好き”をゆずらない

“好き”という気持ちをゆずらずこだわりのもの選びをする辻さんに、あらためて黒い靴の魅力を伺った。

「黒い靴のよさは、ごまかしが利かないところ。一概に値段では区切れないところもあって、色、フォルム、トゥや履き口など、靴の細部が浮き彫りになるのが黒い靴。このショートブーツは、素材感とヒールといった細部に目がいきます。ヒールは履いたときに自分からは見えない部分。人が見て感じる部分に遊びがあるのが素敵です」

プライベートでたくさんの黒い靴を履いてきたからこそ、そのよさがわかったと辻さんは話します。女らしい余韻を残すしなやかな着こなしに、大人の色香が漂うスウェードの優しい黒がよく合う。そんな唯一無二のスタイリングをする辻さんは、スタイリストとして靴とどう付き合っているのだろうか。
「私服と仕事で靴の付き合い方は全く違います。仕事では媒体や読者のことをある程度イメージしてスタイリングをしますが、媒体の型にはめてしまうと一辺倒になり、読む人にとってつまらないものになってしまいます。それぞれの状況や気分に合わせて靴を選んで欲しいから、新しい発見や広がりが生まれるような提案を心がけています」

感覚や気分で、靴選びはもっとシンプルでいい

感覚や気分で、靴選びはもっとシンプルでいい

“ANELLI”のバックルが施されたショートブーツにマキシ丈の赤いドレスを合わせた辻さん。さらりと羽織ったキャメルのコートが柔和な雰囲気を漂わせ、佇まいの美しさを引き立てている。

「赤はずっと大好きな色で、ドレスやコート、靴やバッグなど何でもつい買ってしまいます。その赤を起点にキャメルを合わせるのは、私にとってスタンダードなスタイル。ドレスとコートがマキシ丈のもの同士で面が大きく印象が強くなってしまっても、そこにベーシックな1足があればすぐにまとまります」

当初このコーディネートに、プレーンなNEBIのショートブーツを合わせようと考えていた辻さん。実際に履いてみて、バックルの存在感があるほうが面白いと感じたそう。

「こうだからこうという、計算でコーディネートを組むことはほとんどありません。履いた時の感覚やその日の気分といった、もっとシンプルなことでいいのかなと思っていて。私にとってショートブーツは普通に絶対に履く靴。自分にとっての定番靴をいろいろな素材、色やヒールで揃えていくと、洋服から派生するコーディネートでも、必ず寄り添ってくれる1足になると思います」

いつもの自分のスタイルに、小さな変化のある靴

いつもの自分のスタイルに、小さな変化のある靴

海に浮かぶ島をイメージした“ISLAND HEEL”が特徴的なパープルのパンプスを、辻さんはシンプルなアイテムでつくるモノトーンスタイルに合わせました。

「Tシャツもスキニーパンツもパンプスも、私の中の超ベーシック。Tシャツは大きさ、パンツはハイウエストが気分だとか、そういう部分ですごくこだわって選んでいるからこそ、シンプルにしていられます。パンプスを見るときはまず色で、次にヒール。このパンプスは、アッパーとヒールがさりげなくカラーブロックになっているところや、少し遊びのある形のヒールが魅力。大きな変化より小さな変化がある靴が好みです」

伝える、伝わる、そうなることが大事

伝える、伝わる、そうなることが大事

「ショートブーツもパンプスも私が常にいつも履いているものなので、この2足に大きな違いはありません。だから赤いドレスにパンプスを合わせてもいいし、Tシャツとスキニーパンツにショートブーツを合わせてもいい。ペリーコの靴はベースとなる木型があって、ヒールなどの細部で遊んでいるからどんな洋服でも信頼して履けます。履く人が時に我慢をしなければならないようなエレガントな靴も私は好きですが、履き心地と見た目のバランスがとれたペリーコの靴も、すごく希少価値があると思っています」

そう語る辻さんは凛としていて、“心の艶”のようなものを感じさせる。内面からにじみでる佇まいの美しさはどこにあるのだろうか。

「自分がこうありたいとか、人からこう見られたいとかばかりを考えているとまわりを窮屈にさせてしまいそうで、だから自分の理想や他者の評価ばかりを意識し過ぎないようにしています。それよりも自分が思っていることを伝える、ということが大切だと思っています。はっきり伝えることもありますし、柔らかかったりぼんやりと包んで伝えたり、伝えるということにいろいろな温度をもたせているんです。自分が思っていることだけが一人歩きしないように、相手に伝わってこそ、そこに意味ができる大切なことだと思うので。コミュニケーションにおいて失敗もするからこそ、私の中で大切にしていることです」

辻 直子/Naoko Tsuji

『BAILA』『Marisol』や『otona MUSE』など、数多くの女性ファッション誌で活躍し、女優やタレントのスタイリングも手掛けるスタイリスト。ファッションブランドのディレクション、コラボレーションなども行う。フェミニンで品がよく、女らしいコーディネートは多くの女性から高い支持を得ている。プライベートファッションがのぞけるインスタグラムも人気。
Instagram : @naoko.ts

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