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Interview
Donna per PELLICO

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INTERVIEW 河村真菜さん

INTERVIEW 河村真菜さん

「ひとつのシューズを長く大切に履く」という文化を根付かせるために、ひたむきに努力を重ねてきたひとがいる。女性では珍しい、靴磨き職人の河村真菜さんだ。1冊の本をきっかけに夢見た世界は、決して平坦な道のりではないが、一歩ずつ確実に進めば、必ず目的地に近づくことを教えてくれる。靴を磨くことに没頭し続けた、彼女の人生の新章とは。

内側に栄養を入れることで、靴は長持ちする

お気に入りの国は「モーリシャス」というほど、実はかなりの旅行好きだという河村真菜さん。そんな彼女が履いているのは、新たなアイコンLUNETTA(ルネッタ)のサンダル。その印象について尋ねると、「リゾートでは、サマーワンピースにフラットサンダルが私の定番。歩きやすく、サイドにぬけたデザインが洗練されていて、まさに旅行に持っていきたい一足です」と語ってくれた。

20年春夏に登場したLUNETTAのサンダルは、キャンバスにエナメル加工を施した新素材LINDON(リンドン)を使用。普段のお手入れは、どのようにすればよいのだろう。

「パテントなどの加工がされているレザーは、外側からのアプローチがほとんどできません。そういった場合、ライニングと呼ばれる靴の内側に革を柔らかくするオイルを塗り込みます。外側はブラッシングと乾拭きだけで十分です。一日履いたら48時間休ませてあげることも、靴を長持ちさせるポイントです」

靴磨きは、女性のお肌のお手入れと同じ

ゆるっとしたロングヘアが女性らしい河村さんだが、本を広げているその手には、靴磨き職人としての揺るぎない覚悟を感じる。

「クリームやワックスを塗るときは、すべて素手で行います。お客様の大切な靴を傷つけてしまっては取り返しがつかないので、爪は深爪するくらい短く切って、ネイルもしません」

素手で行うのは、体温でクリームやワックスがよく伸び、乾燥している部分も感覚的にわかるからだという。男性に比べると、女性はまだあまり靴磨きをする習慣がない。そんな女性に向けて、「動物の皮でできている革靴は、生き物の肌を纏ったものだから、人間と同じように、表面に付着した埃や汚れを落とし、保湿する必要があります。靴磨きは、女性のお肌のお手入れと同じです。一日5分だけでも、こういったケアを続けられるかどうかが、美しさの寿命につながります。大変に思うかもしれないけれど、足元がきれいだとテンション上がりません?」と笑顔で靴磨きの大切さを伝える。

一度馬鹿になって、思いのまま行動するのもいい

柔らかな物腰に反して、弟子入りを志願したり、イタリアにいる靴磨き職人に会いに行ったり。そのバイタリティはどこからくるのか訊くと、「あの本に出会うまでは、何となしに生きていました。このままではいけないと思いながら、変えるきっかけもなくて。人生を賭けてやってみたいというものが見つかったものの、深く考えると動けなくなってしまいそうだったので、一度馬鹿になって何も考えず、思いのままに行動しました。その結果、今の私がいる感じです」

そして今、彼女が目指してきた“ひとつのシューズを長く大切に履く”という文化が少しずつ根付き始めている。

「靴磨き職人としての人生をスタートさせた4年前、靴を磨くことは珍しいことでした。それを変えたいという思いでこれまでやってきましたが、サスティナビリティの流れから最近靴磨きがブームになっていて。続けてきて良かったなと思いますし、これからも靴磨きの楽しさをより広めていきたいです」


河村真菜/Mana Kawamura

愛知県出身。24歳のときに友人から借りた本『イタリア人の働き方』に感銘を受け、企業OLから女性靴磨き職人へ転身。名古屋にある靴磨き・靴修理専門店「GAKUPLUS」にて3年間の修行を積み、2019年より、GAKUPLUS TOKYOのオーナーに。現在は、オンラインを中心に靴磨きを行うほか、靴磨きに関するイベントにも出演予定。

Instagram : @mana_kawamura

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